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村上春樹著「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」はちょっと大人の青春小説だ。

  最初にいうのもなんですが、ラスト3行がとっても好きです!
どこか、心の奥底にある「モヤモヤが固まった小石」が
ドロップのようにトロけ去っていく心地の良い作品とでもいいましょうか。
うまくいえないけど、人生に対して前向きになれる作品でした。

村上春樹さんの作品としては珍しい?明確なストーリー展開。
ミステリー作品のような展開もあり主人公も能動的。
一気に読みきりました。


あらすじは。。。

主人公である「つくる」は
自分のことを色彩のない空虚な人間だと卑下しつづけて生きていました。
自分は人に何も与えられない空っぽな人間だと。。。
その原因は大学2年の時に起きた「ある事件」でした。
それをきっかけにして主人公つくるが高校時代に濃密な時間をともに過ごした友達を一気に失い、彼の人生に大きな喪失感をもたらすことになります。自分の存在を確認できる「帰るべき場所」を失ってしまうのです。
「お前とはもう会わない。これがみんなの総意だ。」
そのひとことで。
理由も告げられず。。。
それ以来、彼の興味は生から死へと移っていくことになります。

てのものに興味をなくし生ける屍のような生活を送る主人公つくる。
そんなつくるはある夜、夢の中である感情に身体を支配されます。
それは実体のない生まれて初めて感じる「嫉妬」でした。
そこからつくるの心は徐々に死から生へ向かっていきます。

んな矢先に出会ったのが灰田という年下の男。
つくるにとって灰田とは親友と呼ぶにふさわしい付き合いができる
唯一の存在でした。しかし、その彼はある日こつ然とつくるの前から姿を消します。
再びつくるは友達を失います。
理由もなく、突然に。。。


物語は36歳になったつくると彼の心を理解したい2つ年上の「沙羅」いう女性との会話、学生時代のエピソードとそれにまつわる人物との再会(巡礼)を中心に進められていきます。
それらが現実的にあるいは精神的に絡み合う群像劇のように。


沙羅はつくるの心の闇を感じ、その原因に直面することを強く望み
その心の闇に光を取り戻すべく「自分を切り捨てた」友達と逢うことを薦めます。そしてそこに向かえるように様々な協力をします。
彼もまた、それに応えるべく高校時代の友達に会うため行動を起こしました。


そう、「巡礼」の始まりです。

作品中、随所に描かれるF・リスト作曲「巡礼の年」を聴くシーン。とても印象的です。
彼の行動を暗示、あるいは目的地を示しているような感じです。
「巡礼の年」を聴きながら読み進めるとより物語の世界に入れると思います。


作品のタイトル「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」にもあるように、心の巡礼の物語。

巡礼とは聖地に向けての旅、またはその過程ということです。
では、つくるの聖地はどこだったんだろう?
この作品中の現時点でのつくるの聖地は「沙羅」だったのではないでしょうか。

つくるは沙羅に強く薦められというよりも求められ、自分の過去を直視すべく行動に出ました。
失われた過去と直面し、真実を自ら追究する。
そのことによって「自分を捨てた」と思っていた友達とその時間は
自分の知らない形でそれぞれの中で生き続け、やがて自分が背負ってきた苦悩は「自分」だけのものではなく、それぞれの苦悩があったことを解き明かしていきます。
それを知った時、つくるの心の永久凍土は解け始めたんです。
そのきっかけを作ったのは沙羅だった。
導いたのは沙羅だった。


ステキな女性です。
作品の中では女性として描かれてますがボクもこうありたいと思う人物です。


つくるの巡礼は始まったばかり。
きっと一生続くのだろうと思います。
リストの「巡礼の年」のように様々な空間、時間へと。




これはあくまでもボクの主観ですが。。。

もしかしたら灰田は現実には存在しなかったのではないだろうか?
生きていくためにつくるが想像した偶像ではないのだろうか。
ボクにはそう思えてならない。
人は本当に孤独になった時、妄想によって自分を正気に保とうとするものだと思うんです。



最後に。。。

主人公のつくるは作品のタイトルにあるように
「色彩を持たない」のではないと思うんです。
様々な色を反映し得ることの出来る「白」なんじゃないのかなぁ。
そのことを沙羅は教えてくれたんだと思うんです。

作品中には様々な色が登場します。
アカ・アオ・ミドリ・
シロ・クロ・グレー。

そして沙羅の名前を含む沙羅双樹の花は白。
それに呼応したつくるは。。。






最後まで読んでくれた皆様、ありがとうございました^^/


評価:
村上 春樹
文藝春秋
¥ 1,785
(2013-04-12)
コメント:ラスト3行の表現が好きです。

at 22:45, ヒロティ, BOOKS

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